【報告】「大阪における文化芸術関係者への新型コロナウイルスの影響に関する実態調査」の実施結果について

当財団では、大阪アーツカウンシルとの協力体制のもと、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に伴う活動自粛の要請等によって、大阪府在住または大阪府内を活動拠点としている文化芸術に関わる個人(実演家、創作者、技術者、制作者など)や団体・事業所が受けている影響やニーズ等の実態を把握するためのアンケート調査を実施しました。

5月28日から6月5日までの9日間、ウェブ上で配布・回収し、個人対象は748件、団体・事業所対象は162件、合計910件の有効回答を得ました。このうち、主たる発表・活動場所を「大阪市」とする割合は、個人、団体・事業所共に8割弱を占めました。また個人の回答者の約半数が30代以下でした。

大阪における文化芸術関係者への 新型コロナウイルスの影響に関する実態調査

1)報告書  2)資料(自由記述)

 

<調査結果の主なポイント>

■約9割が、感染拡大防止のために活動の延期・中止の影響があると回答、今後も収入損失が見込まれる

新型コロナウイルス感染拡大防止のために、公演、展示、イベント等が延期または中止になったと回答したのは、個人対象が89%、団体・事業所対象が93%でした。延期・中止による収入の損失について、これまでの実績(2020年2〜5月)とこれからの見込み(2020年6〜12月)を聞いたところ、個人の平均は、実績が約62万円、見込みが約121万円、団体・事業所の平均は、実績が約528万円、見込みが約852万円で、活動自粛が解除された後も、年末まで延期や中止による影響を受けて収入減少が続く実態が明らかになりました。特に個人では、66%が文化芸術とは別の仕事もしており、別の仕事でも収入の損失があるとの回答が6割(全回答者の4割)を超えています。また、技能分野別の損失を見ると、技術提供や施設運営、企画制作の分野で損失額の平均が高く、文化芸術の様々な支え手も深刻な影響を受けていることがうかがえます。

■困ることは、「創作発表の機会の減少」「活動再開のタイミングや方法が分からない」「観客や顧客が戻ってこない」

現在困っていることを聞いたところ、最も回答が多かったのが「創作発表の機会が失われたこと」(個人対象71%、団体・事業所対象65%)で、次いで「活動再開のタイミングや方法が分からないこと」(個人対象54%、団体・事業所対象55%)でした。また、半年〜1年先に困りそうなことについては、団体・事業者対象で「観客や顧客が戻ってこないこと」が最多(65%)でした。活動が再開できる状況になっても、課題を抱える関係者が多い現状が表れています。

■最も必要としている支援は、「延期・中止による損失分の支援」「活動再開や新規事業展開に向けた支援」

必要としている支援については、「公演、展示、イベント等の延期・中止による損失分の支援」(個人対象59%、団体・事業所対象65%)、「活動再開や新規事業展開に向けた支援」(個人対象62%、団体・事業所対象59%)が多く挙げられました。
損失分の支援に関して、既存の支援策等を活用している回答者もいるものの、「現在ある支援策では対象から外れている」との声も記述回答で複数寄せられています。支援対象に関しては、延期や中止による損失だけでなく、「ソーシャルディスタンスのための観客減で入場料収入が減少するため、減収分を補填して欲しい」という要望が多く聞かれました。
一方、活動再開に向けて「現実性のある(興業が成り立つ)ガイドラインが必要」「吹奏楽など密集で実施される表現形態に対するガイドラインやエビデンスが欲しい」「どう対処したらいいのか相談できる場が欲しい」「活動再開を判断するための情報をまとめて発信して欲しい」「活動休止等について情報交換ができるネットワークが必要」などの回答もあり、現場に即したガイドラインの策定や情報提供、相談対応等、金銭面以外の支援のニーズも高いことが明らかになりました。